大震災に対する高齢先進国モデル構想会議の姿勢
東日本大震災において亡くなった方の人数は、4月15日午前現在1万3,538人。行方不明者を合わせると2万8,127人にのぼる。日本史上最大の災害の一つとなってしまった。
さらに、助かった方々も暗い闇の中にいる。最低限の人間らしい生活のために必要な住居、身体特性にあった食事、衛生的な排泄や入浴設備といった基本的な生活基盤さえ、ままならない。ましてや社会的弱者に多く見られる固有の生活ニーズについては、生命に関わる問題でさえも、未だ満たすに至っていない状況である。
これは、短期的には被災地の問題であろう。しかし今後、物資・食料・エネルギーの不足、内需の縮小、輸出産業の縮小、海外からの投資の縮小等、日本全体に大きな余震がくる。我々は、すべてが崩壊した現状を、新しい社会の創造の時と捉え臨まなくてはならない。
このたびの震災は、新たな現象をもたらした。一つは、既存の援助システム(行政、職能団体、支援団体)では埋めることのできなかった役割を担う組織が、自発的に生まれていることである。被災地では、官だけではなく民間、NPO、ボランティア等が共助の精神で支え合っている。まさに「新しい公共」の姿を、私たちは目の当たりにした。
次に、新たな情報の流れである。既存のメディアよりも迅速に個人が発する情報が流れる「ソーシャルネットワーク」は一気に市民権を得た。そして、新しいお金の流れである。企業や団体、さらには個人からの善意が寄付という形で集まり、弱者を支えている構図は、これまでの日本にはあまり見られなかった。
このように、人やモノ、カネや情報の新たな流れが芽生えている。それは、新しい社会に向けたイノベーションの萌芽である。
これら一つ一つの動きから、喫緊に整備すべき社会システムが浮き彫りになった。まず、高齢者など、いわゆる社会的弱者を救う仕組みである。また、情報を消滅、または途切れさせないための一元管理の仕組みが必要だ。さらには、人、モノ、カネ、情報の流れで起こるイノベーションを推進・発展させる法整備である。これらは元々、その必要性が指摘されていたが、今回の震災を機に喫緊の課題として再認識されたと解釈すべきである。
この問題意識を受け、今後日本全体が動き出すだろう。まず、官、民間、NPOなどが連携して生活者に必要なニーズを汲み取り、マッチングさせ、サービスを提供するプラットフォームの構築、また国民ID制が実現し、弱者を見過ごさずあまねく誰もが必要なセーフティネットやサービスを享受できる権利が担保される環境整備。
さらには、次々に創出されるICTを活用したサービスと受益者を結び付ける仕組みの整備が進むことだろう。これらはまさに、高齢先進国モデル構想会議が展望した近未来である。
このように、震災は今後ゆっくり姿を表す高齢社会の課題を短い時間で浮き彫りにした。この、いわば戦時状態を前に、本構想会議は叡智を結集することが求められている。そしてこの取り組みがまさに我々が目指しているモデルを実現し日本そして世界に広めていく大きな礎となるだろうと確信する。
各企業は、既にいろいろな貢献をされ、多くの方々を救ってこられた。しかし現状は、必ずしも必要な人・場所に、必要な物、お金、情報が届いていない。そこでこのたび、日本財団や現地ボランティア団体を束ねる「つなプロ」の活動と連携し、必要な人に必要なものを届けること、中でも避難所人口の約4割を占める高齢者をサポートする仕組みの構築に取り組むことを提案する。一つの企業では達成できないことも会議の枠組みで実現できる複合的な支援があると信じている。
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