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藤森 義明 氏(株式会社住生活グループ 代表執行役社長兼CEO)「日本から発信する高齢社会対策」

藤森 義明 氏藤森 義明 氏|プロフィール(2011年4月現在)詳しく知る

1975年 東京大学工学部卒業
1975年 日商岩井株式会社(現・双日株式会社)入社
1997年 日本GE株式会社入社
2003年 GEアジアパシフィックプレジデント兼CEO
2008年 日本ゼネラル・エレクトリック株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO
2011年 株式会社住生活グループ 代表執行役社長兼CEO

対談内容

世界最大の複合企業であるGEで長年ご経験を積んでこられた藤森義明 氏(前 日本ゼネラル・エレクトリック株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO)は、日本の高齢社会への対応として、ITやデータベースなどを使った様々な展開をされていらっしゃいます。その取り組みについて語っていただきました。


藤森 義明 氏と対談01 本日は貴重なお時間をありがとうございます。高齢先進国の日本で都市部高齢者の孤独に危機感を持ち、そうした人たちの生活を支えていくために、医療を中心に企業とコンソーシアムを組んで課題解決したいと考えています。藤森さんの高齢者対応への取り組みについてお聞かせください。
地域医療や在宅医療という問題に対して、武藤先生は現場を大事にされており、私たちは企業としてできるサポートを行っています。同じ目的を達成するにしても、武藤先生だけでできること、私たちだけができることにはそれぞれ限界がありますから、同じように考える人たちが結びつき、お互いに協力し合えれば、もっと大きなことができます。その結果、幸せになる方が増えてくるはずです。
御社も含めて企業は、ビジネスを土台とし、社会の問題の解決に、またより豊かな社会の実現に取り組んでおられます。医療側も同様の視点で変化、進化し、大きな変革を起こすことが期待されています。これからの日本の医療は、救急医療と在宅医療の柱をしっかり位置づけてこそ、機能分化された提供体制が可能となりえると考えます。
先人たちが並々ならぬ努力で培ってこられた在宅医療分野が、さらに進化しより強い社会インフラとなるよう尽力しています。さらに、医療の立場から高齢者の生活を支えるサービス構築に努め、そのことにより社会に変革をもたらしたいと考えています。
高齢者の生活を支援していくには、医療や介護だけではできないことを、在宅医療の経験を通じて痛感しています。医療・介護の上に生活支援をしてくださる方々と連携しプラットホームを構築すること必要です。
藤森 義明 氏と対談02 都市部でのチャレンジは素晴らしいですね。私たちも同じ想いです。現在の日本では9割近くの方が病院で亡くなります。患者が安心して終末期を過ごし、また病院が機能特化するためには在宅医療へのシフトが重要で、そのためには「いかに家で安心して最期を迎えることができるか」が問われています。
私たちはIT・モバイル機器、教育のノウハウなどを駆使して、そこへのサポートをしたいと考えています。しかし、在宅高齢者のニーズ、医療者のニーズについて、私たちは実態がわかっていません。ですから武藤先生のように現場を持ち、十分に知り尽くしている方たちと一緒にやっていきたいと思っています。
また、地方自治体と民間企業が連携しての試みも進めています。たとえば宮城県では、知事の賛同をいただき、宮城県固有の課題である高齢化、新生児、救急への対応に取り組んでいます。宮城県登米市では、高齢化による医療ニーズにもかかわらず医師が非常に少ないので、市長と共同で、地域連携やIT・モバイル機器などの利用により課題解決に向けて進んでいます。
私は医療とビジネス界をいい形で結びつけるファンクションになりたいと思っています。今、民間企業の叡智がないと埋まらない問題が存在しているからです。一方で、急速なスピードで変化する社会状況に追いつくべく、これから若い人材の教育を行いたいと思っています。
若い医師が学び、在宅医療、生活を支える医療に志を持ち、動きを加速させていくというイメージです。これから5年くらいかけてネットワークを作っていきたいと考えています。
私たちは小型超音波機器を出しています。中国やインドなどで、医師がいないところでの利用を見込んでいます。看護師が機器を使いデータを転送して、医師が判断するというのは海外ではよくやられています。日本では、在宅医療の現場で活躍できるかもしれません。
遠隔医療が最後に大きな成果を出し課題を解決するでしょう。高齢化が進み、外出もままならない高齢者の方々が点在、都市の中での孤立が進みます。この課題については「集住」が促進されることが見込まれます。しかしそれでも「住み慣れたところがいい」という方も必ずいらっしゃるでしょうから、その時には遠隔医療は大きな解決策の一つになると思います。
医師の仕事は、診断し治療方針を決め、状態変化に併せて調整していく、というサイクルを回すことです。データをとるのは信頼できる人なら誰がやってもかまわず、その観点では遠隔医療に大きな可能性を感じています。
しかしその流れが促進されないとしたら、実は医師も看護師も「自分たちは大変だ」といいながら、権限を離さないという背景があるのではないでしょうか。ワーキングポートフォリオを変えるという発想がないと、少ない医療資源を効率よく効果的に使うことは難しいと思います。
武藤先生の高齢先進国モデル構想は、今後どういったステップを踏んでいくのでしょうか。
高齢先進国モデル構想は3段階で進めます。第1ステップでは、参加企業同士の機能や取り組みを紹介し合うこと、併せて行政の動向や先行事例を研究する勉強会を月1回ほど開催し、コミュニティモデルを検討する段階です。
第2ステップでは、勉強会から発展しコンソーシアムを組織して行う実証実験です。たとえば集合住宅を持つ企業と連携し、そこにお住まいの高齢者の自宅にモニターを設置します。モニター上のオペレーターが、その方の医療や介護、生活のニーズを汲み取り、それらに対応するサービスを企業群で提供するという試みを行います。
オーダーとデリバリーの仕組み、経済循環の仕組み、高齢者の行動変容とアウトカム等、この試みを通じてモデルの開発を行います。これに少なくとも1年はかかるかと思っています。第3ステップでは、汎用性のある仕組みの部分は、必要とされる都市のソリューションとして使ってもらえるよう、国内外に拡げる活動を行うことです。
藤森 義明 氏と対談04 素晴らしいですね。私たちは、老人の動きをパターン化して解析し、いつもと違った動きがあれば知らせてくれるシステムを考えています。
まだ製品化はできていませんが、たとえば転倒ということに関して言えば、転倒した後見守るのではなく、転倒する前の行動をデータベース化することで、こうした行動をすると転倒の確率が高くなるのがわかるようにするというものです。
アメリカの実証実験では、設置した高齢者住宅では転倒率が7割違っています。アメリカと日本は生活様式が違いますし、人間の骨の強さも異なります。ですから、日本でデータマイニングをしなければなりません。介護度が進む原因は、転倒がトップ4に入っています。
そこで、脳梗塞や心筋梗塞ではなく転倒に焦点を当てようということなのです。私たちはこうした予防を中心にした在宅医療とは別に、ストローク(急性虚血性脳卒中)のゴールデンアワーの中に処置の仕組みをどう入れるかという取り組みも行っています。もう一つは、エビデンスベースのクリニカルディシジョンのサポートです。
ITを使って、医師一人ひとりの知見だけでなく、データの蓄積による傾向提示です。アメリカですでにかなり行われているものをアレンジして、データベースツールとして介護や在宅医療に展開できないかと検討をしています。
藤森 義明 氏と対談03 在宅でのニーズの多様性をもっと認識すること、そしてそれに応え得るサービスを実現することの重要性はおっしゃる通りですが、そのためには、在宅医療を魅力ある分野にしなければなりません。
今、大学病院等と検討しているのは、在宅医と病院の専門医のいわば「交換留学」制度です。これにより、医師のキャリアパスの流動性を作りたいと思っています。さらに大事なのはアカデミックな活動です。海外ではプライマリ・ケア医がかなり学会発表しています。
アカデミックパートナーと組み、しっかりとした研究デザインを描き、海外の権威ある雑誌に臨床研究論文を発表できるような分野とすることで、在宅医療に携わる医師のモチベーションは上がりますし、社会的な評価も一層向上すると思います。
日本発信ということが最近なかなかないので、必要なことですね。私たちも自社の製品も含め、日本発のペーパーが世界に出ていくことを本当に望んでおり、そのための支援をしていきたいと考えています。高齢先進国モデルについて、私たちもご協力したいと思っていますので、武藤先生には頑張っていただきたいと思います。
心強いお言葉に、励まされます。日本の高齢化は世界が注目しています。ぜひ皆さまとともに、高齢社会問題を解決していく日本の姿を構築できればと願います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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武藤 真祐(聞き手)
武藤 真祐|医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック 理事長 詳しく知る

1990年 開成高校卒業
1996年 東京大学医学部卒業
2002年 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了
2010年 祐ホームクリニック開設
2011年 祐ホームクリニック石巻開設
内閣官房高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 医療分野の取組みに関するタスクフォース構成員
みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会 システム構築委員会 委員
石巻市医療・介護・福祉・くらしワーキンググループ委員
経済産業省地域新成長産業創出促進事業ソーシャルビジネス推進研究会委員等公職を歴任

藤森 義明 氏と対談

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